目次
テーマパークの運営手法で「街や店」は元気になれる
自分の歴史
30年以上人が集まり、人が楽しむレジャー施設の開発、運営のコンサルタントをしてきました。コンサルタントは顧客よりも多くの知識と経験を持つことで顧客の信頼を得て業務にあたりますが、自分は新卒のため知識も経験もなかったため、実在する施設を見て、自身で感じることで不足を補うために続けてきました。

会社業務に必要な知識を所属企業で学び、実践するとともに、入社以降は全国のテーマパークや水族館、果ては神社や歴史遺産など人がレジャー(余暇)を過ごす場所に足を運び、なぜ人が集まり楽しむのか?を施設のパーツ(入口、遊戯機器、飲食、物販など)に分解して研究する活動を続けてきました。

この研究によりわかったことが
- 「成功と失敗はどちらも必然の産物」であり、偶然発生することではない
- サービスは科学化することで数値化して比較することができる
- サービスは3つの事象に集約することができる
の3つです。「サービスは3つの事象に集約することができる」というのは自分が30年以上研究し続けてたどり着いた独自のメソッドです。
サービスは3つの事象に集約することができるとは?
サービスという考え方は高度成長期に一業種に複数企業がしのぎを競う時代から歌われていますが、当時から現在まで一貫して言われているのが「迅速、正確、丁寧」の3つです。もちろんこの考え方は重要です。 しかし、経済成長が停滞し、少子高齢化、インフレなど国民生活で先行きに不安を持つ人が多くなっている時代はこの3つでは満足してもらえない場合が多くあります。

経済の停滞期に必要なサービスの3要素は
- (適切に)時間をかけること:「速さ」ではなく「深さ」による満足の設計
- 正確性:誠実さと確かな裏付けに基づいた情報の担保
- (次回に期待したくなる)拡張性:顧客の次の行動や期待をデザインし、売上(増収)に直結させる仕掛け
を念頭に実施すべきです。
なぜこうした考えが必要なのか?事例で考えて見ましょう。
(適切に)時間をかけること
顧客から「アイスが買いたい」と言われた時の対応
「迅速、正確、丁寧」を重んじる対応
顧客:アイスはどこで買えますか?
スタッフ:通りを進んだ右のお店です
※対応時は丁寧に伝えるために、目線を顧客に合わせましょう
一方で
(適切に)時間をかける対応
顧客:アイスはどこで買えますか?
スタッフ:カップ?バー?ソフトクリーム?どのアイスですか
顧客:ソフトクリームが良いです
スタッフ:この先を左に曲がった先にあります
(適切に)時間をかけるサービスとは「(適切に)時間をかけること」で顧客のニーズに踏み込んで案内できること
サービスには早さと共に深さがありこれが満たされることが満足度の形成に重要
令和の時代に求められる「サービスの正確性」
顧客に与える情報が正確であることがまず重要です。間違ったお店を案内したり、閉店しているお店を案内するのはダメです。
さらに正確性には「嘘をつかない(誠実)」、「未確認情報で伝えない」なども含まれます。「たぶん・・・」とか「おそらく・・」という言い方を決してしないということです。SNS情報があふれる現代ではとても重要です。
正確に伝えることの中には禁止事項や遵守事項など顧客の動きを制限するものもあります。一度に多くの顧客を捌かなければならない現場では、「●×しないで(NO)」ばかりを伝えて、その場所の楽しみ方(HOW)を伝えきれないことがあります。これではサービスは台無しです。

テーマパークではアトラクションの利用前にプレショーという機能があります。
そこでは禁止事項、遵守事項など注意事項の説明と共に、どのように楽しむか?を提案してくれます。
特に観光地では顧客が多くなる時期は、ひたすら禁止事項に特化する施設もありますので、「ルール(NO)と楽しみ方(HOW)の説明」がセットできるように対応する必要があります。
(次回に期待したくなる)拡張性
先ほどのソフトクリームを買いたい顧客に、別れ際に伝える言葉として
「食べる前に写真を撮るときはお店の右にある場所がフォトスポットですので使ってください」
などと付けてあげます。
(適切に)時間をかける対応
顧客:アイスはどこで買えますか?
スタッフ:カップ?バー?ソフトクリーム?どのアイスですか
顧客:ソフトクリームが良いです
スタッフ:この先を左に曲がった先にあります
顧客:ありがとうございます
(次回に期待したくなる)拡張性
スタッフ:食べる前にフォトスポットで写真を撮ってみると良いですよ
顧客(の思い):フォトスポット使ってみよう!他の商品を買って試してみようかな!

別れ際に伝える言葉として「食べる前に写真を撮るときはお店の右にある場所がフォトスポットですので使ってください」などと付けてあげます。
すると顧客は買った後の行動を思い描くことができるので購入する確率が高まり、更には「買う前に写真を撮る」という食べる以外の行動が拡張されます。
うまくすれば「写真を撮る」ために別のフードや商品を買う可能性も出てきます。
現在の求められるサービスの本質
自分の提案するサービスの三要素は「売り上げをアップさせる」策として機能する場合が非常に多くあります。以下のような効果が期待できます
- サービスによって増収させる効果が期待できます
- サービスという定性的なものを売上という数値化して比較評価することも可能になります。
テーマパーク式集客施策で街づくりを活性化する方法
「ハコものに頼らない住みやすさの醸成方法」とは何か?
テーマパークなど集客施設の顧客の増加や減衰に特徴があります。
ある年を基準にして入場者が減衰する場合には、まずはリピーターのリピート回数が減ります。
日別の入場者数を降順に並べた場合
- 減衰はグラフの中央より左側から始まります。
- ここで対策を打たないと次に入場者が多い日(グラフの左端の一番入場者が多い時期)が減少し始めます。
- 最後に全体が減少していきます。
このような状況が発生する理由は
入場者減衰は
- リピーター層の減少
- 超繁忙期の入場者の減少
- 年間全体が減衰する
という三段階で発生するからです。

テーマパークの入場者数のグラフを街の納税者と納税額に置き換えると、相似性があるのではないでしょうか?
街に魅力がなかったら、
まずは所得に余裕のある層から転出していきます(高額、中額)
→テーマパークのリピーターの減衰と同じです。
次に、魅力がないことで転入が減ります
→テーマパークの新規顧客が減るのと同じです。
最後は高齢化して税収が減り、人口全体が減少するという状況になる

この減衰を防ぐ手立ては大きく分けて二つあります。
一つ目は大型投資を行って顧客(特に新規顧客)を取り込む方法です。
街でいえば大型の公共施設を作ったり、商業施設を誘致したりすることでしょうか?しかしこの方法は経費という大きな課題を同時に抱えることにもなります。
そこで、成功するテーマパークで用いられるのが二つ目の方法です。
それが「ANIVERSARY」という考え方です。5周年、10周年と大きなものは5年周期で行うことが多いのですが、これにより過去5年以内に来た人たちを再び取り込もうとするのです。もちろん新規顧客の取り込みも念頭に入れます。経費は掛かりますが、大型投資を行うよりは少なくて済むし、その後の維持費はほとんどかかりません。
この視点で街を見てみると、意外なほどにANIVERSARYの意識は低いです。
高速道路や公共施設の建設は行うけど、居住している住民が何年いても特に何か恩恵はなく、せいぜい成人式や高齢になった際の喜寿祝いくらいではないでしょうか?
社会人になり居住するようになって、5年、10年という節目で何かしらの「ANIVERSARY」を待ちが住民に与えることができたら、今までとはちょっと違う意識で生活してくれると思います。
テーマパークのブランディング商店街も活性化する方法
~そのままの状態でも顧客がやってくる~
視察活動を始めた当時はデジタル記録ができない時代でしたが、1999年にデジタルカメラを手に入れてから行った施設の当時の状態を記録してきました。
一か所平均で300枚程度あるので、560カ所行ってきた記録は静止画が17万枚、動画が600本程度あり、容量では3TB程度になります。
同じ施設を定期的に視察し続けると、その施設を利用する顧客の使い方、施設のブランディング方法の変化、顧客そのものの変質など様々なことがわかります。
2000年以前のテーマパークはアトラクションに乗るための施設と考える顧客が多く、施設もできるだけ多くの施設を利用してもらうための工夫が中心でした。
2005年頃までは携帯の普及もあり家族や大事な人との時間を記録するフォトスポットでもありました。
リーマンショックや震災発生以降は、飲食や物販さらには園内で他の人が知らない楽しみ方をアピールする人が増えています。
コロナ禍以降ではスマホやSNSの普及によりテーマパークは自己実現の背景として利用される機会も増えてきています。
顧客志向の変化に合わせてブランディングも変えないと顧客から見放されることになる

顧客を長期に渡って維持し続ける戦略はTDRと言えども成功しているとは言い難い状況も発生しています。
USJが低迷して一強だったころは、幼少期は親と、大きくなって友達や恋人と、家庭を持って自分の子供と、という来訪機会を経てファンを拡大してきましたが、この間告知戦略については重視していませんでした。
さらにディズニー映画が大きなヒットがないまま、キャラクターの存在感が希薄になっていきます。
そして現在テレビを見るよりもゲームや動画サイトを見る人が多くなってきている時代にはUSJのアニメやゲームの世界をより身近に感じる顧客が増えています。
こうなるとかつてのディズニー映画でファンになった年齢層が高い人が顧客の主流を占めるようになり、それよりも若い層が寄り付きにくくなるという現象が起きています。

こうしたブランディング戦略におけるある種の「慢心」は地方の観光都市でも当てはまるのではないでしょうか?
かつて隆盛を誇っていた観光地はやはり隆盛時のブランディングや告知戦略から抜け出せず、現在の顧客ニーズに合わない施策を打ったり、本来は取込めたはずの顧客を取り逃がしたりするという事態に陥っていないでしょうか?

また、衰退した商店街も全国で散見されていますが、こうした場所をどのように再建するのか?という課題を持っているところも多くあると思います。
実はテーマパークも常にすべての施設が営業しているわけではありません。
時期によってはフェンス(商店街ならシャッターのような役割)で囲って顧客に見えないように工事をすることも多々あります。
そうしたフェンスですら集客のツールとして使われています。
これはテーマパークという施設が顧客の自己実現のためのツールとして使われていることの何よりの証です。
こうしたノウハウを衰退した商店街にも利用できれば、今とは違う街になり、延いては観光収入や税収にも好影響を与えるのではないでしょうか?
テーマパーク研究で見つけたソリューション
~こんな視点でテーマパーク見てみませんか?~
ここからはテーマパークの運営手法を異業種にどのように転用できるのか?ということについて考えて見ます。
テーマパークにしても水族館や博物館にしても顧客を維持して売上を維持するための工夫は一つだけではありません。たくさんのチャレンジをしてその中で当たったものを継続しています。
この「当たりの確率」を上げるためには的確で十分な分析と検証が必要ですが、成功している施設は大型投資一辺倒ではないという特徴もあります。

「街づくり」への転用
年間入場者数の分析のようにどの層が増えた、どの層が減ったという分析に対して対策を講じる必要があります。
ハコもの一辺倒ではなく、ANIVERSARYやイベントを効果的に利用することで、居住空間を快適にものにすることで住民の満足度を上げることが求められます。
様々な顧客ニーズをどのように受け入れているのか?という視点でレジャー施設のノウハウを取り入れてみてはどうでしょうか?
「小売り業、商店街」への転用
レジャー施設の中で特にテーマパークはそうですが、「生活必需品とは真逆の商品を、値引きなしで販売する」商業施設です。
そこには顧客の期待を裏切らない体験、没入という思想があります。そしてテーマパーク内の各店舗が一体化して顧客に対してサービスを提供できるからこそ、物が売れるという事実があります。
価格や品数だけで勝負するのではECサイトや量販店には太刀打ちできません。路面店には路面店の戦略があり、顧客に品物だけでなく体験を販売できるようにすることで優位性を見出すことができます。
前述のシャッター街などは商業的な側面だけで、顧客の自己実現の場所として機能させるなどの柔軟な発想も重要です。こうした視点でレジャー施設のノウハウを取り入れてみてはどうでしょうか?
「介護・福祉」施設への転用
全国共通の悩みとしてレクリエーション活動をどうするか?ということがあるのではないでしょうか?またバリアフリーの考え方も大量集客施設は学ぶべき点も多くあります。
ショーやイベントなどの見えたままを取り入れるよりも、実施に当たって何を考えて、どういう効果を期待して行っているのか?という視点を理解してからレジャー施設のノウハウを取り入れてみてはどうでしょうか?
30年継続したことで積み上げた実績の二刀流活用
コンサルタントとしての業務で培った
- 数値解析、情報分析業務、業界標準値との比較能力
30年という期間継続した視察活動の結果
- 17万枚・560か所以上の視察という記録
- 400本以上の動画
など積み上げてきた結果、「理論と分析だけで終わるのではなく、様々な事例から適正解を探し出すことが可能」な街や店の人の役に立つソリューションができてきました。
その中で感じたことは「見方を知らなければせっかくの視察も時間と経費の無駄」になってしまうということです。
だからと言って何も見ずに周囲の情報だけを聞いて業務を実施してくのは、目をつむってダッシュするのと同じです。ここまでご覧になった皆さま、「あなたの街やお店をテーマパーク理論で診断してみませんか?」。

具体的なアドバイザー業務
- 今まで話してきたようなテーマパークを実際に見てもらい、そのノウハウを感じて活かせるようにするための視察の動向
- ノウハウを知り、自分の業務に生かすための事例や実施方法のついてのセミナー
- 期間をかけて改善していくための検証や改善の業務
の3種類で対応できます。

エピローグ
私自身ここにたどり着くまでに様々な挫折や困難を経験してきました。
視察して分析して比較するという手法は現代のタイパという考え方からするととても非効率な方法かもしれません。
AIが全盛でなんでもAIの指示で動く、こうした考え方もあるようですが、それではあなたの会社、職場、立場、は他の人たちと変わらないものになってしまって埋没してしまうのではないでしょうか?
見る、学ぶ、その知識を使うことは大きな投資をかけて成功さえるよりもコスパはとても良い活動です。
最後に自分から皆さんへ送ります
レジャー施設の非日常空間づくりのノウハウを活かせば、街も店も人も今より元気になれる





