なくなるよ!!@スペースワールド
NO.345
スペースワールド
日時 2017年7月26日
自分の住んでいる九州地区で年始に最も驚かされたのが「スペースワールド年内で閉園」という話だった。昨今はハウステンボスに押されまくっている感は否めない雰囲気がずっと続いていたとはいえ、九州内で100万人オーバー規模を維持している施設が閉園になるというのは衝撃的だった。
さらに、衝撃を受けたのが閉園を逆手にとった「なくなるよ!!全員集合」の施策。これは行かねば・・・と思いつつ今日まで機会を逸していた。
お馴染みのスペースワールド駅。博多からでも小倉からでも近いイメージはあるが、博多からだと60分コース。小倉からだと15分ほど。
駅からは右側にスペースワールドの敷地を見ながらチケット売り場を目指すことになります。バナーに「FINAL」の文字が躍っています。もうすぐ閉園というのに、それを売り物にしている感じが面白いです。
夏休みに入ったというものの今日は平日、極端な混雑は予想していませんでしたがチケット売り場前は閑散としています。時間が昼過ぎということも影響しているんでしょうか?
6カ所あるチケット売り場のうち稼働しているのは1つ。自分を含めて3組ほどしか待っていないので仕方ないというとことでしょうか?
以前来た時はチケットは「パスポートのみ」だったのですが、今は入場券だけでも買えます。でもせっかくなので今日は「パスポート」を利用することにしました。
パスポートを持っているとアトラクション乗り放題になるほか、夏限定のプールも利用できるのです。今日の暑さに対抗するには、プールでの冷却は欠かせません。早く入りたい・・・
パスポートを示すリストバンドもいつの間にか、新しいタイプに変わっていました。かつて来た時にはあちこちで謳っていた「年間パスポート」。さすがに閉園まで半年なので販売は終了しています。
スペースワールドの敷地ですが二等辺三角形のようになっています。入口は三角形の長辺の中央部あたり。ここから左に行けばプールやタイタン。右に行けばスペースシャトルやヴィーナスグランプリなどがあります。
まずはプール。とにかく体を冷やしたい・・・
プールは「MuNa」という名前が付いています。パスポートで入れるしいうなればアトラクションの一つとして考えてしまえばいい施設です。
まずは着替えます。ロッカーは男女共用ですので、更衣ブースで着替えます。エアコンが極端によく聞いているプレハブです。ロッカーに物を入れずにここで保管している人もいます。ここに来る人で洋服だけを盗むような人はいないでしょうが・・・自分はちゃんとロッカーに入れます。
ロッカーが一工夫あって面白いですね。扉の中央に小さな扉があってここは開け閉め自由。必要なものまで押し込んでロッカーを占めてしまったときに絶望感を味わうことはありません。
プールは十分に楽しめるくらいいろいろな機能が揃っています。まず最初に見えてくるのが子供用の遊具プールエリア。大きなバケツから水がぶちまけられたりとお馴染みの施設です。
その隣に小さめですが、バブルマシーンをぜいたくに使ったバブルプール。定期的に泡が吹き出すのでその時間に行くのがおすすめの施設。
さらに奥に行くと「辛・死海プール」。体が浮くほど塩分濃度が高い「死海」を意識した施設。塩=辛いという発想が面白いですね。
ちなみにこのプールの入口には「足つぼ押し」が設置されています。知らずに乗ってしまったときの強烈な痛みはたまりません。。。通路の右側は普通の通路なんですが、近くを通って早くいきたい心理をうまく突いています。
その隣は、このプールのメイン施設「ぐるぐるリバー」。流れるプールです。泳ぐことを重視しているプールではないので水深は90センチと控えめです。
プールの中央部にはスライダーが2種類あります。受付はどちらも中央の発券所。
グループで来た時のレンタルスペースもあります。シンプルだけどしっかり作られていていい感じです。8割くらいは埋まっていました。
飲食施設は入口近くにあるスナックコーナーと、奥にたたずむ「プールの家」と呼ばれる施設。かなり奥にあるので、たどり着いた後何も買わずに帰るのはちょっと気が引ける。。。という作戦で作られたのでしょうか?ホントに奥まった場所にあります。
泳ぐというよりは水遊びが主体の施設ですが、必要なものはすべて揃っているので十分に楽しめます。自分も体をだいぶ冷やすことができました。
プール外の施設を覗いてみることにします。ありがたいことにスペースワールドのアトラクションは全て水着での利用がOKです。これは大変助かります。
まずは隣の「ザターン」。スペースワールド最速のコースターです。こちらコースターのGを利用してのツボ押しが楽しめます。効果は・・・???ですがアイデアは面白いですね。
実際には?出発してから数秒で130キロに急加速して垂直上昇し、垂直下降して終了なのでツボ押し体験時間は1分にも満たず。。。10回くらい乗れば効果出るかもしれません!?
コースターと言えばスペースワールドの名物タイタンMAX。お昼時は休憩時間があるので注意が必要ですが、こちらも健在。水着のまま乗ると頂上付近ではちょっと寒いです。。。
タイタンのある場所の反対側には、ヴィーナスGPがあります。こちらはいつも通り「叫び声」でスピードが変わる(?)という趣向で運営されています。20人以上乗れるコースターですが、オペレーターは一人。頑張りますねぇ・・・
観覧車「スペースアイ」ではスマホアプリをセットすることで観覧車に乗りながら「怪談」が効けるという趣向です。最終年にしていろんなアイデア盛りだくさん。
他にもいろいろアトラクションがあるのですが、14時から始まるイベント「ハイパーバリかけMAX」は外すことはできません。夏限定の水かけ祭り。タイの水かけ祭りを原型にしているそうですが、水かけ+泡かけと今年は最終年にふさわしいハチャメチャぶりです。
終わればずぶ濡れ。。。なんとも気持ちの良いイベントです。今年はずぶ濡れ系イベント全国で流行っていますね。
さんざん遊んで最後に見たのがお土産。なんと「FINAL」を冠したお土産があります。閉園に向けてお土産開発する施設ってなかなかお目にかかれませんね。
入口近辺の壁には来場者の寄せ書きコーナーもあります。閉園を惜しむ人、閉園と知って初めて来たという人。。。いろいろです。
夏が終われば閉園に向けてのカウントダウンとなります。しんみりと閉園するのではなく、大騒ぎしながら楽しく最期を迎えたい。そんな施設の意気込みは感じますね。。。
果たしてどんな最後になるのか?今から楽しみです。
2018年1月1日午前2時で惜しまれつつ閉園した「スペースワールド」。そのテーマ性から苦戦を強いられることもあったが、テーマを最後まで貫いた矜持のある施設でした。
視察履歴
なくなるよ!! (2017年7月26日)
密やかな(?)20周年(2010年4月6日)
やや大人向け、一人でも楽しめるスペースワールド(2002年2月24日)
動画内容の文書起こし
昔、まだ元号が平成と言われた時代に、九州は福岡県、北九州市に「スペースワールド」というテーマパークがありました。
平成2年に、それまでユニバーサルスタジオの候補地にもなったことがある、新日鉄の工場の跡地でスペースワールドは誕生しました。
開業時の最寄り駅はJR九州の枝光駅。ここから徒歩15分ほどの距離でした。
その後、スペースワールド駅が開業して、施設の目の前が駅になりました。
敷地の中には、スペースシャトルの実物大模型があり、一日に数回煙を上げて発射するイベントがありました。
西日本では施設独自のキャラクターショーがある最初のテーマパークでもありました。
パーク内のアトラクションは星や宇宙を連想させる名前で統一されており、宇宙のことを学習できる宿泊棟もありました。
初年度は185万人と、当時の西日本では最大の入場者数を誇るテーマパークでした。
施設の目新しさ、九州で初めての大型テーマパークは多くの周辺居住者の興味を引き、西日本を商圏に多くの人が訪れる施設となりました。
しかし、当時は東京ディズニーランドを筆頭に遊園地やテーマパークはアトラクションの設置競争を繰り広げている時代、
スペースワールドもその荒波に飲み込まれ、開業後も毎年のように新機種を開業させていきました。
入場者数はその後は右肩上がりで増えていきましたが、度重なる機器の投資は会社の経営に大きく負担を強いるものでした。
入場者数は1996年の216万人をピークに、徐々に減少に転じます。
1992年に長崎県にハウステンボスが開業し、テーマパークとしての唯一性が失われてしまったこと。
さらに九州内の遊園地施設もアトラクション機器を逐次投入して集客の挽回を図ってきたことが原因でもあります。
そして、長期間に渡って顧客の来場意欲を保ち続けることが難しい「宇宙」がテーマであったことも響いておりました。
2001年に大阪にユニバーサルスタジオジャパンが開業すると、今まで独占状態だった西日本地域の顧客が流出を始めます。
こうして、2005年にスペースワールドは民事再生法を申請して、事実上の倒産となりました。
その後、レジャー施設の運営で大きな成功を収めている加森観光が新しい経営会社となり、スペースワールドは再建に向けて再出発するのでした。
まずは、日本初登場の大型アトラクションが導入されます。
その名もマグナムブースター「ザターン」。
油圧式のカタパルトで急加速されたライドは65メートルの高さまで垂直上昇、その後一気に垂直下降するというものでした。
経営が加森観光になって、運営には変化の兆しが見えるようになりました。
それまで他の遊園地のライドと同じような運営をしていたアトラクションでした。
スペースワールドでは他の遊園地にあるようなライドでもスタッフによる演出が加わるようになりました。
機器のハードはそのままですが、アトラクションの名称が変わり、新しい運営方法は顧客の興味を再び引き始め、2007年に集客の増加に転じました。
その後はアトラクションの演出が面白いパークとして九州内と中国地方西部を中心に順調に集客を取り返していきました。
当時はユニバーサルスタジオジャパンの業績不調などがありました。この反動を恩恵にしながら多くのファンに愛される施設となりました。
2007年には九州では設置している施設が少ないスケートリンク「フリージングポート」が開業します。
屋内に設置して通年営業するため、夏の時期でもスケートが楽しめるという施設でした。
しかし、この年にメインアトラクションであった「タイタンV」が運営中に負傷者を出す事故を起こし、以降しばらくの間運営できない状態になります。
それでも2008年にはそれまで子供遊具エリアとして利用されていた場所を改装し、本格的なプールエリア「ミューナ」が開業します。
これによりスペースワールドでは夏にプールを楽しんだ後に、スケートも楽しめるという内容が盛りだくさんな施設になりました。
開業20周年の際には、それまでステージを中心に活動してきたキャラクターが登場するパレードなども実施されました。
従来からあるアトラクションに加えて、キャラクターショー、プールやスケートなどの体験施設など様々な楽しみ方ができるスペースワールドは多くの顧客を魅了し続けました
一時期、スケートリンクは廃棄された魚を氷の中に埋め込み、「氷の水族館」として営業する期間もありました。
廃棄された魚を氷に埋め込んで顧客に見せることが、ネット上を中心に非難を浴びることになりました。
しかし、数々の不祥事を乗り越えて、2016年にスペースワールドは過去最高の利益を達成したのでした。
何度も、危機的な状況に追い込まれながらも、不死鳥のように立ち直ってきたスペースワールドでしたが、2017年になって衝撃的なニュースが流れました。
2017年の年末をもって閉園することになったのです。
スペースワールド側の説明では、レジャー環境の多様化による施設の魅力低下や、全国的な少子化の進行、主要商圏の北九州市の人口減少などが原因とされました。
また、一部の報道では土地の所有者の新日本製鉄と運営会社の加森観光の間での賃貸契約交渉がうまくまとまらなかったことが原因ともいわれました。
スタッフが整列して「なくなるよ!全員集合!」と呼びかけるCMは商圏内にとどまらず、全国のテーマパーク愛好家の注目を浴び、施設は活気を取り戻しました。
最終年度は入場が制限される日もあるほどの人気となりました。
そして、2018年1月1日午前2時、2017年のカウントダウン営業を終了したスペースワールドは27年間の生涯を閉じることになりました。
スペースワールドのライド機器は、一部は他の施設へと移り、今も利用されています。
「またいつか、別の星で会いましょう」が最後の挨拶の言葉だったスペースワールド
テーマを作り、テーマに泣き、テーマを育て、テーマを貫いた、スペースワールド
これほどまでに、華やかに、感動的な閉園は、日本のレジャー施設の歴史上に類を見ません
現在、その面影を知ることができるのはJR鹿児島線の駅名だけになってしまいました。